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企業秩序については具体的に書面化されていなければ,社員としては企業で何をどのように守ったらよいかわからず,結果として企業秩序が乱されるということにもなりますので,多くの企業では,企業秩序の定立・維持の一環として「服務規律」と称される社員の遵守すべきルールを就業規則において定めているわけです。
その内容は企業によって異なり,多岐にわたっていますが,大体次頁のように分類することができるでしょう。
・懲戒処分の種類は懲戒処分の種類について,法律は別段の定めをしていません。
したがって公序良俗に反しない限り,企業において自由に定めることができますが,多くの企業では「戒告・けん責」,「減給」,「出勤停止」,「諭旨解雇」,「懲戒解雇」などが懲戒処分として就業規則において定められています。
その内容は次のとおりです。
戒告・けん責この懲戒処分は,将来を戒めるというものであり,一般に始末書の提出をさせるのが「けん責」で,始末書の提出をさせないのが「戒告」ですが,どちらもそれ自体では社員に不利益を課するというものではありませんので,戒告やけん責処分の無効確認の訴えについては門前払いになることがあります(Tバス事件・東京高判平2.7.19判時1366号139頁)。
< 服務規律の例>社員の就業および職場規律入退場に関する規律(通用口の指定,出勤手続,所持品検査など)遅刻・早退・欠勤・休暇の手続に関する規律(届出,許可など)外出・面会・離席に関する規律(届出,許可など)上司の指示・命令への服従義務に関する規律職務専念に関する規律(勤務時間中は公私の区分を図り職務に専念することなど)職務上の金品授受の禁止に関する規律 職場の風紀維持に関する規律( けんか・暴行など)職場の整理・整頓に関する規律安全衛生に関する規律(安全衛生規定の遵守など)服装に関する規律(制服,制帽など)財産鋤管理幌全槻律+:識職限,集会・演説などの禁止など)社員の身分・地位に関する規律信用保持に関する規律(企業の名誉,信用の穀損など)秘密保持に関する規律(企業秘密の遵守など)兼職・兼業の規制に関する規律(承認・許可・禁止など)公職立候補者等に関する規律(届出・承認など)ただし,けん責処分を課されて始末書の提出をしないときは,人事考課の査定において不利に考慮されることは否定できないでしょう。
減給この懲戒処分は,制裁としての賃金の控除ですから,「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え,総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」と定める労働基準法91条の減給の制裁規定の適用を受けることになります。
「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」とは,1回の制裁事案に対する減給額が平均貸金の1日分の半額以内でなければならないということで何回(何日)にわたって減給できるということではありません(昭23.9.23基収1789号)。
また,「総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とは,一賃金支払期に発生したいくつかの制裁事案に対する減給の総額が,当該賃金支払期における賃金総額の10分の1以内でなければならないということです(昭23.9.23基収1789号)。
つまり,1ヶ月のうちに,社員が何回も減給の制裁に該当する企業秩序違反の行為を行い,減給額が多額になる場合であっても,その月の賃金からの減給額はその月の賃金総額の10分の1の範囲に止めるようにしなければならないということです。
ですから,ある社員が企業秩序違反の重大な非行行為を行ったとしても,それが1ヶ月に1回である限り,これに対する減給額は平均賃金の1日分の半額に止めなければならず,1ヶ月の賃金総額の10分の1以上の減給を行うことはできません。
それは,減給の制裁が従前の職務に従事させながら,社員が当然受領することができる賃金から減給を行うという趣旨のものだからです。
それでは,懲戒処分としては軽すぎるというのであれば出勤停止などの重い処分を課せばよいということになるわけです。
なお,賞与については労働基準法91条の減給の制裁の対象となっていないので,懲戒処分を受けた者につきマイナス査定することも差し支えありませんが,支給ゼロとなるような減給は,本条の趣旨および民法90条の公序良俗に反し無効になるということになるでしょう。
このような減給の制裁との関係で問題となるのが,「降格」(格下げ)といわれる懲戒処分ですが,降格は部長から課長へ,課長から係長へというようにその地位を下げることにともなって賃金が引き下げられる処分ですから,減給の制裁に該当するものではありません(昭26.3.14基収518号)。
しかし,降格処分をしても,同一職務に従事させながら賃金のみを減ずるものであれば労働基準法91条の減給の制裁規定の適用を受けることになります(昭37.9.6基発917号)。
出勤停止出勤停止は,一定期間出勤を停止し,かつその間の給与を支給しない制裁のことで,企業によっては「自宅謹慎」と呼んで,就業規則に定めているところもあります。
出勤停止の期間を何日にするかは企業の自由ですが,労働省においては,工場法時代の「7日を限度とする」という行政解釈(大15.12.13発労71号)が現在でも一応の基準として踏襲されるべきものであるという考え方を明らかにしていることもあってか(労働省労働基準局編『全訂版・労働基準法(下)』労働法コンメンタール・平成2年版・832頁),実際上は7日〜10日前後が多いようです。
諭旨解雇諭旨解雇は,懲戒解雇に該当する場合であっても,本人の将来を考慮し,退職願の提出を勧告し,即時退職を求め,これに応じないときは,懲戒解雇するという制裁のことです。
この場合は,次の懲戒解雇のように,退職金について,その全部または一部が不支給とされているのが一般的です。
懲戒解雇懲戒解雇は,重大,悪質な企業秩序違反に対する懲戒処分の極刑であり,通常は即時解雇として解雇予告をおかないで,しかも退職金の全部または一部が支給されない取扱いがなされており,わが国では再就職の重大な障害になるという不利益がともなうものです。
懲戒処分の原則は企業が懲戒処分を社員に課する場合にあたっては,守らなければならない諸原則があります。
就業規則に該当する懲戒事由・種類・程度であること前述のとおり,懲戒処分は企業秩序の定立・維持の一環としてこれを担保するための制裁罰ですから,企業は企業秩序の違反に対して就業規則の懲戒事由・種類・程度にかかわらず,懲戒処分を課することができるように思われます。
しかし,労働基準法では,社員が守るべき事由も示されないで突然懲戒処分を受けることを防止する観点から「制裁の定めをする場合においては,その種類及び程度」を就業規則に記載することを義務づけていますし,また前掲・Kt札幌運転区事件最高裁判例は,「規則の定めるところに従い」懲戒処分することができると判示していますので,就業規則に定める懲戒事由・種類・程度において懲戒処分しなければならないということになります。
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